ラベル ワカトビ の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル ワカトビ の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2010年2月13日土曜日

ワカトビの海を眺めながら思ったこと

ワカトビの海を眺めながら、いろいろな思いにふけった。

まず、コペンハーゲンや京都での国際会議に参加している方々に、ワカトビのような気候変動や生物多様性保全の現場の人々の生活や活動がどのように認識されているのか、ということ。

東南スラウェシ州でも有数に貧しいと言われ、出稼ぎも少なくないワカトビでも、島々に暮らす人々の数は増加傾向にある。人々が生活するために必要な水や食糧生産(ワカトビの主食はキャッサバ。米はすべて外部から移入)のための土地は、今後も十分に確保できるのか。実は、ワカトビの中心であるワンギワンギ島やカレドゥパ島では、島内の森林伐採が進み、水源の維持に黄信号が点っている。

近い将来、毎日、大量の水を船で島外から運ばなければ人々の生活が維持できない事態になりはしないか。これまで、米はなくとも、キャッサバやサゴヤシで飢えを経験しなかったワカトビで、今後も人々を養うために十分な食料を確保していけるのか。

今回のワカトビでのワークショップのテーマは、持続的発展であった。

私は試みに参加者に質問してみた。イエスだったら挙手をお願いした。「皆さんはワカトビが好きですか?」。ほぼ全員が挙手。「皆さんはワカトビに住み続けたいですか?」。これもほぼ全員が挙手。「皆さんは自分たちの子供や孫にもワカトビでずっと暮らしてほしいですか?」。パラパラっとわずか数人が挙手。

参加者のほとんどは県政府の役人だったが、彼らにとっての「持続的発展」とは、珊瑚礁保全のような、外部者から働きかけがあって初めて認識する頭の中のものであって、自分たちの生活をどう維持していくかという現実の部分から持続的発展を認識していなかったことが明らかになってしまった。

国際会議の議論と現実とをつなげていくには、この辺からしっかりと取り組んでいかなければならないのではないだろうか。こうした役人たちの認識を形成させた一端は、我々外部者の現場の人々に対するこれまでの認識やアプローチの仕方による面がたぶんにあるだろうと思った。

もうひとつ。ワカトビでの会議の展開を見ながら、もはや「一方から一方へ援助するというやり方が意味をなさなくなりつつあるのではないか」ということ、また「相手側の自立を促し、自分たちだけでやれるようになっていく」ということが気候変動や生物多様性保全については当てはまれないのではないか、ということである。

相手側の自立支援のための援助では、援助する側に「いつまでにどのように相手側にとって援助が必要でなくなる状態にしていくか」というプロセスを明確にし、援助する側の退出の意識を明確化しておくことが重要である。それがないと、援助する側のモラルハザードが生じる。

しかし、グローバルな世界に直結する気候変動対策や生物多様性保全は、その現場の利益だけではなく、地域や国境を越えた地球全体の共通利益ともいえるものである。こうした地球全体の共通利益も、現場の人々の行為や活動によって影響を受けるという意味で、グローバル・イシューであると同時にローカル・イシューにもなる、両者直結のイシューととらえるべきであろう。相手が自立したら援助はおしまい、なのではなく、地球全体の共通利益のために、グローバルの世界とローカルの世界が一緒になって取り組んでいくべき性格のものなのではないか。

翻って、これまで両者は一緒になってやってきたと言えるだろうか。非常に簡単に言ってしまえば、先進国側が資金や援助を出し、現場側に「お願いだから、援助をあげるから、サンゴ礁を守ってくれ」というような面がないとは言えないのではないか。現場の方々に、環境を保全することが自分たちの生活を守っていくためにより利益がある、ということを真に認識してもらえているのだろうか。

「一緒に」という意味は、そこまで深く下りていって、現場の方々を敬い、真に寄り添うことによって、初めて可能になるものであろう。現場の方々が主体的に何かを起こし、それが地球全体の共通利益と結び付く方向性を目指していくのである。やはり、外部者の現場の方々への関わり方が問われてくるだろう。

そして、その「一緒に」という取り組みは、必ずしも公的援助である必要はないのではないか、とも思った。ワカトビの現場の人々の主体的な活動が気候変動対策や生物多様性保全に関わるものであれば、それを応援したい個人や組織が「社会的投資」のような形で関わりを持ってもよいのではないか。

たとえば、ワカトビで地元の人々がダイビング・ビジネスをやろうとするときに、外部者がそれに対して「社会的投資」のような形で応援することは、珊瑚礁保全の活動につながるだろう。ペットボトルをリサイクルして、海藻生産用の「浮き」を作る小さな工場を作りたい地元の方がいれば、それに「社会的投資」をおこなうことは、環境保全に貢献することになるだろう。ほんの小さなものでも、現場の人々の行為や行動に外部者の関心が向けられることで、現場で何かポジティブなことが生まれてくるのが期待できるのではないか。

まだまだ粗い、思いつきの域を出ない考えだが・・・。

ワカトビ再訪

2月7~9日にワカトビを再訪した。何度来ても、ワカトビの珊瑚礁の海の美しさを堪能してしまう。今回も、ワカトビ県知事に誘われて、他の訪問者と一緒に、ホガ島まで小旅行をした。

ワカトビの中心、ワンギワンギ島の上空から。

海面下のサンゴが見渡せる、透明な海水。

珊瑚礁の海の上で暮らすバジャウ人の海上集落。

帆をかけ、風を受けながら走る漁民たちの小舟。

近年盛んな海藻生産。県知事曰く、「海の田んぼ」。
世界の海藻生産の大半はワカトビを含む珊瑚礁三角地帯で営まれる。

ホガ島の桟橋。ワカトビ県は、このホガ島を珊瑚礁三角地帯の気候変動や珊瑚礁保全に関する現場密着型の調査研究センターにしたい意向。実際、英国エセックス大学がこれまで10年間、ここを拠点に珊瑚礁の状況について定点観測を行ってきている。

にわか雨に打たれながら、船上から見た夕日。


2009年10月2日金曜日

クンダリ→ワカトビの航空便が増便、1日2便に

東南スラウェシ州の州都クンダリから珊瑚礁で有名なワカトビ(ワンギワンギ)へのアクセスがさらに便利になった。現在、Susi Airが1日2便運航している。運航時刻は以下の通り。

 クンダリ→ワンギワンギ
 08:50→09:40 (毎日)、14:10→15:00 (月・水・土)、15:30→16:20 (日・火・木・金)

 ワンギワンギ→クンダリ
 09:50→10:40 (毎日)、16:30→17:20 (毎日)

ほかにも、ブトン島のバウバウへの便もある。

 クンダリ→バウバウ 07:00→07:40 (毎日)
 バウバウ→クンダリ 07:50→08:30 (毎日)

 ワンギワンギ→バウバウ 15:10→15:40 (月・水・土)
 バウバウ→ワンギワンギ 15:50→16:20 (月・水・土)

すでに、バリ島の日本語フリーマガジン『アピ・マガジン』にワカトビ情報を執筆したが、そこでのアクセス情報が古くなってしまった。上記が最新情報で、以後も、何かあれば、本ブログで情報を更新していく。

Susi Airの予約・ブッキングなどの情報は、以下へ。

 Email: info@susiair.com
 Mobile: +62-811-2113080, +62-811-2113090

2009年5月18日月曜日

カレドゥパ島でカソワミを食べる

ワカトビ県滞在中に、カレドゥパ島へ1泊2日で出かけた。ワカトビ県のワンギワンギ島にある県都ワンチからは高速船で約1時間半。ダイビングで名高いホガ島は、カレドゥパ島のすぐ東にある。

カレドゥパ島の手前、海上集落に立ち寄る。ここは、バジャウ族の人々の暮らす集落である。本当に、海の上に浮いているかのような集落である。家にはパラボラ・アンテナも見える。




その昔、1950年代後半、スラウェシ島南部一帯で、政府に反抗してイスラーム連邦国家化を目指すダルル・イスラーム運動が起こった際、この地域も大変な争乱となった。反政府軍のイスラーム勢力は、カレドゥパ島にも攻め入ってきたが、その先兵として使われたのが、その海上で暮らすバジャウ族であった。バジャウ族を先頭にした反政府軍はカレドゥパ島に攻め入り、島民との間で殺戮が起きた。島民は対抗してバジャウ族を島外へ追い払った。しかし、バジャウ族も昔からカレドゥパ島近くの海域で暮らしてきたため、島の長老たちは慣習法に則り、ホルオ村のマンティゴラ地区にバジャウ族の居住地を定め、そこにバジャウ族を住まわせた。しかし、今でも、カレドゥパ島民のバジャウ族に対する感情はよくない。

カレドゥパ島は、決して大きな島ではない。しかし、中央部には、標高は決して高くはないが、山岳地帯の趣をもつ風景がある。この山岳部の頂上付近にパジャン村がある。この村には、古い要塞の跡があった。この村の尾根道からは、左右両方に海を見渡すことができる。


そしてこの村は、カレドゥパ織と呼ばれる伝統的な布を多くの村人が織っている村でもある。実はこのカレドゥパ織は、5年ほど前に消滅寸前であったのを、地元住民組織が中心となって、復活させたものである。今回は、残念ながらカレドゥパ織の現物を見ることはできなかったが、南スラウェシから入ってくるサロン・ブギス(サロンとは腰巻のこと)に比べると、織りが繊細で柔らかな手触りなのだとか。島内の伝統行事等でカレドゥパ織のサロンを着用することが増えているそうである。

さて、カレドゥパ島で食べたのは、カソワミと呼ばれるキャッサバ加工品である。実は、ワカトビ県には水田がなく、米を生産していない(米はすべて外からの移入)。住民の主食はキャッサバを加工したカソワミで、カレドゥパ島は県内で最も多くのキャッサバを生産している。カソワミには大きく3種類があるようだ。


上写真の左はカソワミ・オンロオンロ、右はカソワミ・キキリ、とカレドゥパ島では呼ばれる。ワカトビ県で一般的なカソワミはカソワミ・キキリで、カソワミ・オンロオンロはカレドゥパ島で主に食べられる。

カソワミを作るには、まず、キャッサバを切って、よく洗う。カソワミ・キキリはその後、キャッサバを砕いて圧力をかけて水分を飛ばす。さらに、特別な道具を使ってそれを細かくし、ココナッツの葉で編んだものでくるんで蒸す。一方、カソワミ・オンロオンロは、キャッサバを洗った後、キャッサバを砕いたものを型に入れ、一晩海水に浸す。そして2日間、天日で乾かす。乾かしたものを薄く削って、真水に浸し、圧力をかけて蒸す。たしかに、カソワミ・オンロオンロはほのかに塩味がして、それだけでもおいしいものだった。カレドゥパ島の人々は、どちらかというと、カソワミ・オンロオンロのほうを好むそうである。


この2つのカソワミ以外に、カソワミ・ビルというのがある。作り方はほとんど同じだが、天日乾燥させるときに色が黒くなるまで乾燥させるところが異なる。ビルはインドネシア語では青色だが、現地語では黒色を指す。南スラウェシのトラジャやカジャンでは、黒は基本となる色(カジャンでは「すべての色は黒から始まった」と信じられ、身に着ける衣服は黒一色である)であり、カレドゥパでの色をめぐる言葉の違いにも何か意味があるのかもしれない。

ワカトビは、米ではなく、イモの世界なのであった。そして、1997~1998年に米の不作でインドネシアが全国的に食糧危機と大騒ぎしていた頃も、キャッサバやイモを主食とするここでは、食糧難とは無縁の生活が営まれていた。そんなワカトビでも、農業省のプロジェクトを受けて水田を作りたい、と考える役人もいるのである。

もう一つ、カレドゥパ島にはカノと呼ばれるイモがある。ある人によれば、これはカレドゥパ島の固有種で、6種類あるという。このカノが栄養的にどのようなイモなのかは、素人の私にはよくわからない。でも、このカノでつくったチップスは、やめられない止まらない、クセのない飽きないおいしさだった。案内してくれた地元住民組織の代表が言った。「おいしいだろ? でも、お土産にはあげないよ。食べたければ、またカレドゥパに来いよ」。地に足のついた地域づくりが期待できそうな弁であった。



2009年5月10日日曜日

世界有数のサンゴ礁域・ワカトビへの道

ワンギワンギ島北西端を海上より臨む

今回行ってきたワカトビは、東南スラウェシ州東南端にある群島からなる、人口10万人弱の小さな県である。ワカトビの名の由来は、県内の4つの大きな島の頭文字、すなわちワンギワンギ島の「ワ」、カレドゥパ島の「カ」、トミア島の「ト」、ビノンコ島の「ビ」、をつなげた名前である。この群島域は、鍛冶屋列島(Kepulauan Tukang Besi)と以前から呼ばれていて、今回は訪問しなかったが、ビノンコ島には実際、刃物を生産する鍛冶屋が存在するとのことである。

このワカトビは今、世界で最も美しくたくさんの種類のサンゴ礁を持つ地域としても知られ、欧米人などを中心に、まださほど数は多くないが、年間を通してダイビングを楽しむ観光客が訪れている。英国・ロンドンのOperation Wallaceaによると、世界で確認された850種のサンゴ礁のうち、実にその9割に当たる750種がワカトビ海域で確認されている。ちなみに中東の紅海では300種、有名なカリブ海でも50種にすぎないそうで、このサンゴ礁の種類の多さは特筆ものである。また、4島の沖合の環礁の長さは世界最長なのだとか。もちろん、世界で最も珊瑚礁が密集しているインドネシア、マレーシア、フィリピン、パプアニューギニア、ソロモン諸島、東ティモールにまたがるサンゴ礁三角地帯(Coral Triangle)の一角を占めている。今週の5月14日、マナドで開催されている世界海洋会議(World Ocean Conference: WOC)の会場で、このサンゴ礁三角地帯の生態系保全を謳ったサンゴ礁三角地帯イニシアティブ(Coral Triangle Initiative: CTI)が当該6カ国の首脳により調印される。

このワカトビへのアクセスだが、5月15日より、東南スラウェシ州の州都クンダリとワカトビ県の県都ワンチとの間に毎週計10便の飛行機(Susi Air)が飛ぶことになった。基本的に、ジャカルタからマカッサルを経由してクンダリへ15:25に着くガルーダ航空GA604便に接続の予定である。もちろん、戻りも、クンダリ発マカッサル経由ジャカルタ行きの折り返しガルーダ航空GA605便に接続するように時刻が設定される。それ以外に、1日に2便往復する日が3日ある、ということで、柔軟なフライトスケジュールになるようだ。

ワンギワンギ島の新空港の1400m滑走路

航空機以外だと、クンダリから週に5便(日・水は休航)の定期船がある。クンダリを午前10時に発ち、途中、北ブトン県の県都エレケに寄ってから、ワカトビ県の県都ワンチに夜8時頃到着する。戻りも同様で、ワンチを午前10時に出発する。料金は13万ルピアで、船室を使う場合には18万ルピアである。

ほかにも、ブトン島最大の町のバウバウからは毎晩夜行の船便があり、また、ブトン島の中部のラサリムという小さな村からも、早朝発のワンチ行き船便(所要約3時間)が出ている。

今回、筆者は、たまたまワカトビ県知事のモーターボートで移動したので、クンダリ=ワンチ間が約4時間半で済み、快適かつ楽だった。こんな楽をしていると、インドネシア中をリュック一つで旅している親友にまた叱られてしまうのだ。

ワンチについてからの他の島への移動は、定期便だとほぼすべての島への行く船が午前10時にワンチを出る。ただし、ワンチには3つの埠頭(ワンチ、マンダティ、モロ)があり、クンダリ行きはワンチ埠頭から、カレドゥパ島行きはモロ埠頭から出る。他の島からの戻りはいずれも、早朝にワンチに到着する。今回、カレドゥパ島からワンチに戻る際、出発は午前5時半であった。

この海域は、季節によって海がかなり荒れるという。幸運なことに、今回は全般的に穏やかな海で、快適な船旅を楽しむことができた。


2009年5月3日日曜日

ワカトビへ出張中

5月2~8日は東南スラウェシ州ワカトビ県へ出張中。ブログ更新は、マカッサルへ戻った後に行う予定。日本の皆さん、よい黄金週間を。