2010年4月4日日曜日

ALIGUKA


先日、私の友人であるマカッサルの若者たちが作成した『ALIGUKA』という映画を観てきた。

主人公はAligukaという名前の大学生。父親が議員で、何不自由ない生活である。その彼が、大学の卒業論文のテーマを「議員の汚職」にした。指導教官はテーマを変えるように強く求めるが、彼は頑として言うことをきかない。父親からは就職を世話するからとにかく卒業してくれ、と言われる。

プラムディヤ・アナンタ・トゥールやチョムスキーなどを愛読し、世の中に対して批判的なAligukaは、そんな指導教官や父親に嫌気がさして家出し、低所得者層の住む集合住宅で生活を始める。そんななか、父親が汚職容疑で逮捕される。それを横目に、Alikugaは、集合住宅の日々の生活で直面する隣人たちの様々な現実、彼らをそうした状態にさせている世の中の不公正さに直面しながら、一体、世の中がおかしいのか、自分がおかしいのか、分からない状態に陥っていく。そして、彼は精神病院の住人となる。精神病院の住人となったAligukaは、それまでの自分よりも幸せそうな表情をしている。

70分のこの映画は、インドサットがスポンサーになり、マカッサルの若者たちだけで製作された。Aligukaは、逆から読むとAku Gila、「私は気が変」、という意味になる。世の中の汚職を批判するナイーブな若者の話のようにみえるが、実は、それを表に出しつつ、裏では逆に、本の世界を絶対として、世の中の現実をしっかり見ようとしない、頭でっかちな若者たち(映画製作者自身を含む)をAligukaに託して批判しているのであった。

この映画は、マカッサルを州都とする南スラウェシ州がインドネシアで最も汚職のひどい州だという評価を意識して作成された。近いうちに、政治エリートを交えた場で上映することが計画されている。議員さんたちは、この映画をどのように観るのだろうか。

それにしても、こうした映画を作るマカッサルの若者に未来へ向けての前向きの、そして純なパワーを感じる。多くの場合、1回成功すると慢心して2回目以降が続かない傾向がここでは見られるが、是非、次はもっと優れた映画を作ってほしい、と思った。

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