2009年7月10日金曜日

大統領選挙終了

7月8日、インドネシアの正副大統領選挙は、大きな混乱なく、終了した。投票日の二日前に、投票人として登録されていない有権者が身分証明書と家族カードを持参すれば投票できる、という決定を憲法裁判所が急遽決定した、ということを除けば、の話ではあるが。

開票はまだ続き、7月22日頃に総選挙委員会から正式発表がある予定だが、マスコミ各社の開票速報や出口調査では、ユドヨノ=ブディオノ組が60%前後の得票率で当選確実となった。50%以上の得票率の候補ペアがいない場合には、上位2組による決選投票となるが、今回は1回で決まりそうだ。

現職のユドヨノ大統領の再選、という予想通りの結果になったが、興味深い点も多々ある。今日、LSIのSaiful Mujaniが「性別、地域、種族、宗教、宗教組織といった原初的な要素が、もはや有権者の投票行動に影響を与えることはなくなった」「それを打ち壊したのは有権者自身だった」とコメントしていた。

優勢のユドヨノ=ブディオノ組は、どちらも東ジャワの出身で、当初、カラ=ウィラント組から「俺たちは州知事選挙をやっているんじゃない」と揶揄されたが、結果はジャワ=ジャワでも圧倒的に優位だった。2004年の大統領選挙の際には、ユドヨノ=カラはジャワ=外島のコンビだから強い、と言われたものだったのだが。

イスラム・ファクターも、4月の議会選挙でも、今回の大統領選挙でも、前面に出ることはなかった。NUやムハマディヤの指導者たちがカラ=ウィラント組への支持を表明しても、それら組織の一般信者の投票行動に大きな影響は与えなかった。

インドネシア政治を見るうえでジョーシキとされてきたイスラム、ジャワ=外島、といった要素が選挙で効かなくなった、ということなのか。候補者の人物や公約の中身、候補者討論会での立ち振る舞い、などがむしろ影響を与え、人物本位で選ぶようになった、ということかもしれない。

もっとも、ユドヨノ自身に失態となるような大きなマイナス点がなかったことが「なぜ大統領を代えなきゃいけないのか」という素朴な疑問を有権者に広く引き起こしていたのだろう。

不思議なのは、ナングロ・アチェ・ダルサラーム州でユドヨノ=ブディオノ組が9割を超える得票率で圧勝しそうなことである。対照的に、アチェ和平の実現に多大な貢献をしたと自他ともに認めるユスフ・カラが、ほんのわずかの支持しか得られなかった。でも、カラの組んだ相手は、アチェでの軍事行動を指揮したウィラント元国軍司令官だったのが痛かった。

これから5年間、本当に新しいインドネシアに生まれ変わっていくのか。ちょっと期待を抱かせるような有権者の投票行動であった。

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