2010年2月21日日曜日

イニンナワ10周年行事フィナーレ

1週間以上経ってしまったが、2月13日夜、イニンナワ・コミュニティ10周年記念行事の最終日だった。この日まで、4日間、毎日盛りだくさんのイベントが行われてきたが、あいにく、筆者はマカッサルを離れていたため、様子を見ることができなかった。結局、13日の最終日のみ、彼らのイベントを見ることができた。


昼間に行われたのは、マカッサル市内のパサール(市場)で立ち退きを強制されている商人たちを支援しているNGOが主催した、地元パサールについての討論会だった。パサール・テロン、パサール・パナンプの商人たちが集まり、これまでのマカッサルにおける地元パサールの歴史や行政・治安当局にどう集団として対応していくか、といったことが話し合われた。イニンナワ・コミュニティには、農村を支援しているグループもあり、そこでは買い付け商人たちの横暴が問題になっていることから、両者を一堂に会して議論したほうが面白いのではないか、という意見もあったようだが、結局、実現しなかった。

夜は、4日間の記念行事のフィナーレとして、南スラウェシの地元音楽を楽しむ夕べとなった。最初に登場したのは、パロポからの音楽グループ。リズミカルな太鼓とバイオリンを弾きながらの朗々とした詠唱が耳にとても心地よかった。


次に登場したのは、パンケップ県トンポブル村の方々で、ガンブスと呼ばれる、ヤギの皮を張った手製の弦楽器での演奏であった。下写真左側のサレさん(ペチ帽をかぶった年配の方)は、ガンブスの名手として伝説の人物だったそうだが、なぜか、この30年間、ガンブスを演奏しようとしなかった。パンケップ県知事や南スラウェシ州観光局が頼んでも、頑としてガンブスを弾こうとはしなかった。イニンナワ・コミュニティのなかの農村支援NGO「パヨパヨ」がジャワで牛糞を利用したバイオガスの適用を学び、それをパンケップ県山間部のトンポブル村で試したところ、村人に好評を博した。徐々に燃料のための薪用に木を伐採するのが減り始めた。そんななか、突然、サレさんがガンブスを弾こうという気になったのだそうである。でも、なぜなのだろう? ともかく、彼が30年ぶりに弾いたというガンブスは、素朴だがジーンと来るものであった。


トンポブル村のガンブス演奏の後は、イニンナワ・コミュニティの若者たちによる歌、ビオラ演奏などが行われ、パロポのグループが再度演奏した後、ゴワ県の有名な漫談師・ダエン・ミレが登場した。ちょうどウクレレ漫談の牧伸二さんのように、指で弾く小さな弦楽器のケチャピをリズミカルに操り、マカッサル語で聴衆を惹きつけながら最後のオチでどっと笑いをとる、というパターンが何度も何度も繰り返されて、場が大いに盛り上がった。マカッサルの大衆芸能の豊かさを心底感じられたひとときであった。


そして、パロポの演奏グループとダエン・ミレのセッション。即興で双方がそれぞれの持ち味を生かしながら掛け合う。両者に当初の打ち合わせはない。しかし、その即興の妙が存分に発揮され、双方がノリノリになりながら、自由自在に演じる舞台だった。


こうした地元音楽の演奏をリラックスした雰囲気で楽しみながら、ここでこうやって、イニンナワ・コミュニティの若者たちと過ごしてきた思い出の数々を思い起こし、何ともいえぬ芳醇な気持ちを感じていた。言葉にうまく言い表せないのだが、何物にも代えがたい「豊かな空間」、とでもいうものを、この我が家のなかで心地よく感じた夜であった。

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