最近、書店で目につくのが、「100万ルピアで始める小ビジネス」「成功する小食堂ビジネス」といった様々な書物である。下の写真のように、「起業」(wirausaha)というコーナーが設けられているほどだ。
面白いのは、記述が徹底して具体的であること。各ビジネスの特徴、目的、長所・短所などのほか、とくに費用と利益については、実際の数字入りで実例が解説されているのだ。
小食堂、ケイタリングなど飲食関係が多いのだが、ほかにも洗車、クリーニング済み洋服の配達、詰め替え輸入香水屋、家庭教師、バス送迎、不動産仲介、託児所、子供服販売、プレイステーションのレンタル、洋服修繕、など様々である。
本屋では、こうした本を立ち読みする女性たちをよく見る。ちょっとした初期投資で気軽にビジネスを始める動きがどんどん進んできているようで、ジャカルタだけでなく、地方に行っても、あちこちに小ビジネスの動きが見て取れる。
起業ブームの次は、旅行ブームである。最近、大型バスを連ねた団体旅行ツアーが頻繁に見られる。観光客はもちろん、地方のイスラム聖地を訪ねるツアーもあり、おそろいのジルバブ姿の年配の女性たちのバス旅行によく出くわす。
本屋で目立つのは、バックパッカー型の割安旅行の指南書である。西ジャワ、ジョグジャカルタ、東ジャワ、スマトラ、スラウェシなどへの安旅行はもちろんのこと、東南アジアや中国・インドへの安旅行の指南書が続々出版されている。
たとえば、「50万ルピアで行くシンガポール」「200万ルピアで中国南部をまわる16日間」「200万ルピアでまわるベトナム15日間」といったタイトルが並んでいる。しかも、起業の指南書と同様、費用が事細かく書かれている。たとえば、1日目は朝食がいくら、移動のバス代がいくら、昼食代がいくら、博物館の入場料がいくら、夕食代がいくら、宿代がいくらで、全部でいくらかかる、2日目は、3日目は、といった具合である。
数年前から、インドネシアの民間テレビで、若者がバックパッカー型で旅行するルポルタージュ番組が放映され、そうした番組の旅人役が人気者となり、指南書を書いたりするようになった。もちろん、旅行先の簡単な社会・文化の紹介や簡単な語学レッスンも含まれている。
ただし、日本へのバックパッカー型旅行の指南書は見かけなかった。現在の日本ツアーは、大阪に入ってUSJ、富士山・箱根、東京、ディズニーランドをまわって成田から出国、といったパターンが一般的だが、韓国や台湾の若者たちのように、インドネシア語版「地球の歩き方」のような指南書を片手に、個人旅行をするインドネシアの若者たちが日本で見かけられるようになる日もそう遠くはないかもしれない。
最後は、地方グルメブームである。最近、インドネシアのどの地方都市へ行っても、ショッピングモールのなかには同じようなフランチャイズの店やレストランばかりという印象が強く、地方の食文化は廃れてしまうのではないかと危惧していたが、どうも現実は違うようである。
これも本屋で見かけたのだが、各地方都市ごとの地方グルメとその作り方を紹介する本がたくさん出ているのである。確認しただけで、スマラン、バンドン、チレボン、ボゴール、ジョグジャカルタ、ソロ、バリ、スラバヤ、バンカ・ブリトゥン、ロンボク、パレンバン、プカンバルといった各都市で1冊ずつの地方料理紹介本があった。
執筆はとある写真家で、彼が各都市をまわり、地方料理のきれいな写真を散りばめながら、料理法を簡単に解説、「地方料理をご家庭で」というキャッチフレーズとともに紹介している。
これ以外にも、ご当地料理本がたくさん出版されていて、それも麺やスープなど、各地方ごとに料理法の解説が施されている。
地方分権化の影響は、こんなところにも現れているのか。どこへ行っても「ナシゴレンとミーゴレン」という世界ではない、実に多種多様なインドネシアの地方グルメの世界の扉が我々の目の前に展開されるのは、時間の問題だろう。そして、インドネシアの食がいかに豊かで深いものあるか、それを堪能することがインドネシア観光の一つの柱となることだろう。国内では、グルメ観光(wisata kuliner)がすでに定着し始めているのである。
食べ物との出会いは一期一会、という筆者にとっては、ますますおいしくて面白いインドネシアを楽しめる、というものである。
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