2012年4月29日日曜日

審査員は体力勝負

インドネシアでも最も入場者の多い展覧会の一つが、インドネシア国際ハンディクラフト展覧会(イナクラフト)。今年は2012年4月25〜29日にジャカルタ・コンベンション・センター(JCC)で開催されています。

以前から、高品質の工芸品が集まる評判の展覧会、イナクラフトの出展するのが中小ハンディクラフト生産者の誇り、などと聞いていたので、いつかは見てみたいと思っていました。しかし、昨年までは、うまくジャカルタ滞在と日程が合わなくて、見たことがありませんでした。

今年こそは見たいな、と思っていたら、知り合いのインドネシア・ハンディクラフト輸出業者協会(ASEPHI)の友人から「イナクラフトの審査員をしてくれないか」というお誘いが・・・。うむ、これを受ければ、噂のイナクラフトを存分にみることができる、と単純に考え、OKしました。

たしかに、存分にみることはできました。しかも、存分の2〜3乗ぐらいも・・・。

審査員は、約1日半かけて、広大な会場内を歩き回り、1000軒以上のスタンドの商品から、7つのカテゴリー(セラミック、自然繊維、繊維・布、木材・紙、石材、金属、その他)ごとに各3品、計21品を審査会用にノミネートしなければなりません。

学生アシスタントを従えて、4月25日は5時間、26日は3時間、休みなし、ぶっ通しで会場内を歩き回りました。でも、意外に「これは」というものに出会わず、とくにセラミックと金属については25日には1品も選べない有様でした。

実際、会場を回ると分かるのですが、見た目でスタンドの約4割はバティック(蝋纈染め) が占めており、審査をしながら、7つのカテゴリーで一様に3品ずつ選ぶというのが
あまり適当ではないような気がしてきました。

もっとも、このカテゴリーはUNESCOの基準に依拠しており、優秀商品をUNESCOが主宰するASEAN全体でのハンディクラフト展覧会(8月下旬にマレーシアのクパンで開催予定)へ出展するのが目的となっています。とにかく、無理矢理にでも選ばなければならない、という感じでした。

2日間、会場を歩き回って、結局、求められた21品のうち、15品しか選べませんでした。

さて、審査会。私以外の審査員は、もう何年もイナクラフトの審査員をしている強者ぞろいで、初参加は私のみ。聞くところによると、昨年まで常連だったオランダ人のコンサルタントが今年は出席できないので、急遽、代役を探した結果、私にお鉢が回ってきたようでした。

他の審査員は、品物だけでなく、それを作っている職人や会社のこともよく分かっている様子。純粋にいいものを選ぼうとした私とは違い、「これは去年の奴と同じだな」「この会社は受賞の常連だから落とそう」といった観点で審査を行っていました。

そして、私が選んだ商品は、ほぼすべてが落とされました。うーむ、商品に関する好みや品質ではなく、審査の観点が違うのだ、といい勉強になりました。

今回、最優秀賞を取ったのは、中ジャワ州プカロンガンのPirsa Artの絹布(下写真)。落ち着いた色彩の布で、とても細かで丁寧な織りに仕上がっており、高級感があり、日本でも受け入れられるのではないかと思いました。クールビズのフォーマルに近いシャツ用、着物用にも適しているかもしれません。


そして、私が選んだ商品で唯一選ばれた「セメント袋を再利用して細かく裁断し、それをつなげて布のようにし、表面にバティックをあしらったプレースマット」が新興作品賞を受賞しました。偶然ですが、これも中ジャワ州プカロンガンのHape Artという中小企業の作品で、普通の紙では難しいが、セメント袋の紙だとバティックがうまく描ける、ということでした。

イナクラフトは本日(4月29日)夕方5時頃まで開催されています。ただし、かなりの人出が予想されますので、来場時には十分お気をつけて。会場には、外国人バイヤー向けのマネーチェンジャーやクレジットカードセンターも設営されています。

それにしても、イナクラフトの審査員をするのは体力勝負でした。2日間で2キロほど体重が落ちました。でも、昨晩は、友人と中華を食べて、元に戻ってしまいましたが・・・。


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