2011年5月15日日曜日

南カリマンタンの水上マーケット

5月1〜5日は、南カリマンタン州バンジャルマシンに滞在した。実は、南カリマンタン州を訪れるのは初めてだった。そして、バンジャルマシンへ行ったら、まずは名物の水上マーケットを見に行かなければ、と思っていた。

5月2日、朝5時に起床して、マルタプトラ川を1時間半ほど上流へ上り、バンジャル県ロック・バインタンにある水上マーケットを見に行った。あいにくの大雨、しかもガイドの用意した舟には屋根がなく、おなじみブルーのビニールシートを被っての川上りとなった。当然、体中ほぼずぶ濡れ状態。自分の行いの悪さを反省しつつ、大雨の洗礼を受け入れるしかない。なかなかの苦行、である。

水上マーケット、とされた場所には、まだ数隻しか舟が集まっていなかった。それでも、10分、20分と過ぎると、舟はどんどん集まってきて、最盛時には約70〜80隻程度になった。雨なので通常よりは少ないのかもしれないが、日々の生活に必要な野菜や果物を毎日買う場所なので、雨天中止ということはないらしい。ここは、まだ、地元の人々が生活のなかで使っている水上マーケットであった。



舟で売買するのはほとんどが女性である。雨が降っていたので、みんな笠をかぶっていた。野菜などを乗せてくる舟に混じって、何も乗せていない舟が近寄ってくる。商人の舟である。




せっかくなので、より近い、バンジャルマシン市内のクイン川の水上マーケットへも行ってみた。5月5日、またしても朝5時起床、川沿いの家々がすぐ手が届きそうなぐらいの狭い水路を進んでいく。時折かかる橋が低く、船がその橋の下をギリギリに通過する。水上マーケットから戻る頃には満ち潮で水位が上がるため、その狭い水路を通ることはできなかった。

今度は天候に恵まれた。真っ暗だった空が少しずつ明るくなり、朝の光が徐々に空へ映り始めていく。

クイン川の水上マーケットは、2日に行ったロック・バインタンのそれとはかなり趣が異なる。舟の数が少ないのと、私らのような観光客を乗せた舟が何隻かあり、そこへ盛んにモノを売りに来る舟がある。「毎日娘が作るんだよ」とたくさんの種類のスナックを売る娘さん思いの気のいいおじさん。1個1000ルピアのお菓子が船上ではとてもおいしく感じられた。

観光客の多くはインドネシア人で、外国人は見かけない。それでも、観光客をあてにして、ミ・バソ(肉団子入りそば)などの軽食を食べさせる船まで出ていた。


このクイン川の水上マーケット、以前はたくさんの舟で賑わったそうだが、陸上交通が発達するにつれて、利用者が少なくなり、今では風前の灯火のような状況になっているようだ。たしかに、2日に行ったロック・バインタンの水上マーケットのような、地元の人々が日常生活のなかで活用しているようには見受けられなかった。


インドネシアの民間テレビ会社RCTIのテレビ広告では、たくさんの舟で埋まったバンジャルマシンの水上マーケットが写され、ジルバブを被った女性商人の一人が親指を立てて「イエーイッ」とやる部分に"RCTI OK"の声が被さる。そのイメージでバンジャルマシンにやってきたのだが、実際はとてもつつましいものであった。もっとも、年に何回かのイベントの際には、たくさんの舟が動員され、「賑わい」を演出するのだそうである。

バンジャルマシンの周辺で水上マーケットが残っているのは、これらロック・バインタンとクイン川の2ヵ所だということだ。でもきっと他にも、毎日の生活を支える船上での交易が、外部者に知られることなく、行われていることだろう。しかし、陸上交通の改善とともに、水上マーケットもその役割を変えていくことになるのだろう。

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